里見勝蔵先生と並木義治先生と房州の旅

新宿の安田火災東郷青児美術館でブラマンク・里見勝蔵・佐伯祐三展があった
久しぶりに里見勝蔵先生の絵に出合った
45年前(1971年6月)に先生と行った房州の旅がよみがえってきた

「たぶろうの歩み」から  春名康夫   


御宿の断崖でカメラを構える里見先生

仁右衛門島で
春名 並木先生 里見先生 横山

2002年(東郷青児美術館)
ブラマンク・里見勝蔵・佐伯祐三展

 並木会長の師匠である里見勝蔵先生は
フォービズムを日本に紹介し、独立美術協会を創立した
日本画壇の大家である
並木先生に同行して何度か鎌倉山の里見家お伺いした
里見先生の作品は、その後の展覧会等でたくさん見ている
女、花、静物、そしてヨーロッパの風景を多く描いている
しかし、残念なことには
(並木先生がそのような感想を漏らしていた)
日本の美しい風景を描いていない
房州のすばらしい自然を見せたら
きっとすばらしい日本の風景画が見られるに違いない
*****
並木先生の発案で、里見先生を旅行におつれすることになった
幸い、里見先生も同意され、案内役として、私と会員の横山君が同行することとなった
私は車の運転役で
横山君は人当たりが良いので、里見先生のご案内役として最適だろうということでした
 里見先生は、フランスでの生活が長かったこともあって
西洋式のホテルが良いとのことで、国民宿舎の洋室を予約した
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里見先生と並木先生という大画伯お二人を乗せてのドライブ
さすがに緊張の連続でした
里見先生もだいぶ高齢になられていましたが
絵を描くとなると本当にお元気で
御宿の断崖をどんどん登られてスケッチをされた
車がぬかるみにはまった時には先生も一緒になって車の後ろを押した
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 夜は、並木先生のなじみのお店に行き
酒を酌み交わし
里見先生のいろんな話を聞くことが出来た
楽しいひとときを過ごしておりましたが
芸者さん2人が入ってきてから空気が一変してしまった
(店のご主人が気を利かして手配したものだ)
里見先生には気に入らない様子
ついに芸者さんを追い返してしまった
その後が大変で、店の主人の面子はなくなってしまうし
芸者さんは当然面白くない
里見先生をホテルへ送り届けた後
また店に引き返し、並木先生は店の主人に平あやまり
飲み直しの仕儀でした
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 次の日は、里見先生を残して早朝のスケッチへ出かけた
日も高くなってからホテルへ戻り里見先生を起こしたが
皆んな何処へ出かけていたのかとの里見先生の口振りでしたが
並木先生は知らん顔で対応されていた
それでも
里見先生はこの旅行がだいぶうれしかった様子で
鎌倉に戻って来た頃には機嫌も直り
江の島の見えるレストランでごちそうをしていただいた
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大変な旅行でしたが
大先生お二人の今まで知らなかった面を見ることが出来
貴重な体験でした。
ただ、少し残念な事は
その後も里見先生の房州の作品にお目にかかっていないことです
きっと描かれたと思うのですが・・・・・

里見先生のお宅は鎌倉山にありました。
このあたりは有名人が多く、直ぐ下の家は宗像志功先生の家でした。
河内桃子さんの家も近くでした。
里見先生は1981年に他界され、今年、2002年には
並木先生も逝かれました。
今は、お2人で絵の話をされているのでしょうか。
ご冥福をお祈りいたします。   2002年7月

太東海岸

御宿海岸

 

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